品川准教授のブログ

東京大学で准教授をしています。主に研究分野(OSや仮想化などのシステムソフトウェア)に関連したことを気まぐれに書きます。

OS & システムソフトウェアの一流国際会議

OSやシステムソフトウェアをメイントピックとする著名な国際会議を4つ紹介します。

SOSP (ACM Symposium on Operating Systems Principles)

概要

OSやシステムソフトウェアの分野における世界最高峰の国際会議。名称は "Operating Systems" だが、分散システム、ネットワーク、ストレージ、セキュリティ、組み込み等に関するシステムソフトウェア全般を幅広く扱う。

  • 2年に1回しか開催されない(下記のOSDIと交互に開催)
    • 第1回は1967年、2011年に第23回
  • 最近7回(1999年~2011年)の平均採択率は 17% (154本/885本)
1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011
投稿 90 85 128 155 131 139 157 885
採択 19 17 22 20 25 23 28 154
採択率21.1%20.0%17.2%12.9%19.1%16.5%17.8%17.4%
  • 2011年の査読は3ステージ制
    • double blind、論文1本につき3~8名の査読者、査読総数719、最終的にはコアPCメンバー13名で採択を決定
  • 内容の濃い論文
    • レターサイズ14ページ程度
  • 高い被引用数
論文数被引用数平均被引用数H-index
ACM Digital Library (2013年1月現在)609 (-82※) 22,31536.64-
Microsoft Academic Search のデータ (2013年1月現在)41321,28751.573

ACMのデータは関連ワークショップ論文を含む。

論文

※「会議ページ」からは論文やスライド、ビデオ等が無料でダウンロード可能

OSDI (USENIX Symposium on Operating Systems Design and Implementation)

概要

SOSP と並ぶOSやシステムソフトウェアの分野における超一流国際会議。SOSP が徹底した "evaluation" により完全に完成した(≒終了した)仕事が多いのに対し、OSDI は(比較的)設計・実装の面白さを重視した論文が多い。

  • 2年に1回しか開催されない(上記の SOSP と交互に開催)
    • 第1回は1994年、2012年に第10回
    • 歴史は比較的浅いものの、ACM SIGOPSと連携しており、当初よりレベルの高い論文が多い。
  • 最近7回(2000年~2012年)の平均採択率は 15.5% (188本/1,211本)
2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012
投稿 111 150 193 150 193 199 2151,211
採択 24 27 27 27 26 32 25 188
採択率21.6%18.0%14.0%18.0%13.5%16.0%11.6%15.5%
  • 2010年の査読は3ラウンド制
      • 第1ラウンドは査読者2名(約35本がreject)、第2ラウンドは査読者3名(約80本がreject)、第3ラウンドは査読者2~3名(ボーダーラインの論文が協議の末reject)、残った論文をPC会議の前半で全て一通り議論してaccept・acceptable・questionableに分類、accept・acceptableグループを採択にしたのち、PC会議の後半で残りの"questionable"論文の採択を議論、PC会議後さらに"heavier"なPCメンバーによるメール投票で数本を追加採択。
  • 内容の濃い論文
    • レターサイズ14~16ページ程度
  • 高い被引用数
論文数被引用数平均被引用数H-index
ACM Digital Library (2013年1月現在)2217,81735.37-
Microsoft Academic Search のデータ (2013年1月現在)23615,63166.2370
論文

EuroSys (The European Conference on Computer Systems)

概要

2006年に誕生したばかりで歴史は浅いが、当初より高いレベルを保っている一流国際会議。異常にレベルの高い SOSP や OSDI を補完する受け皿として、普通のトップカンファレンスとしての地位を確立しつつある。

  • 毎年開催される
    • 第1回は2006年、2012年に第7回
  • 最近7回(2006年~2012年)の平均採択率は 17.9% (185本/1,036本)
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
投稿 144 131 131 149 141 161 1791,036
採択 29 29 24 25 27 24 27 185
採択率20.1%22.1%18.3%16.8%19.1%14.9%15.1%17.9%
  • 2012年の査読は3ラウンド制
    • 第1ラウンドは査読者3名以上(96本が次のラウンドへ)、第2ラウンドは査読者2名以上、評価の分かれた論文は第3ラウンドで更なる査読、査読総数750
    • 査読コメントに対する著者の反論機会あり
    • 全ての採択論文にはPCメンバーによるシェパードが付く
  • 内容の濃い論文
    • レターサイズ14ページ程度
  • 高い被引用数
論文数被引用数平均被引用数H-index
ACM Digital Libraryのデータ(2013年1月現在)382(-197※)3,1848.34-
Microsoft Academic Search のデータ(2013年1月現在)1783,35618.8530

ACMのデータは関連ワークショップ論文を含む。

論文

USENIX ATC (Annual Technical Conference)

概要

近年アカデミックな論文発表の場として定着してきた一流国際会議。EuroSys と並んで SOSP や OSDI に通らなかった論文の受け皿として成長してきた。EuroSys に落ちた論文を投稿できるように日程調整等がされるときもある。

  • 団体としての USENIX は "The Advanced Computing Systems Association" とも称される
    • "Unix User Group" が起源とされるが、近年は「UNIXユーザ会」的な印象は薄れている
    • 特に Technical Conference は、2000年以降くらいから急速にアカデミックな論文発表の場としての格が上昇し、EuroSys に次ぐ1流(1.5流?)国際会議としての地位を確立している
  • 近年は年に1回開催される
    • Winter と Summer の年2回開催されていた時期もある
    • "Annual" と付くようになったのは 1996 年頃から
    • Technical Conference 自体は1980年代始めから開催されていたようである
    • 開催回数が不明確なため、正式名称は "2012 USENIX Annual Technical Conference" のように年を記載する
  • 最近7回(2006年~2012年)の平均採択率は 15.1% (182本/1,202本)
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
投稿 153 170 176 191 147 180 1851,202
採択 21 24 28 28 22 27 32 182
採択率13.7%14.1%15.9%14.7%15.0%15.0%17.3%15.1%
  • 2012年の査読は3ラウンド制
    • 第1ラウンドは査読者2人、第2ラウンドでは3人目の査読者が付く場合があり、第3ラウンドでは4,5人目の査読者が付く場合がある
    • 全ての採択論文にはPCメンバーによるシェパードが付く
  • 内容の濃い論文
    • レターサイズ12~14ページ程度
  • 高い被引用数
論文数被引用数平均被引用数H-index
Microsoft Academic Search のデータ(2013年1月現在)1,47141,03527.9093
論文